椎間板ヘルニアは坐骨神経痛の主要な原因の一つであり、症状は多岐にわたります。
椎間板ヘルニアの診断にはMRI検査が有効な場合があります。椎間板ヘルニアの治療法は内服やリハビリなどの非手術的治療が基本ですが、病態によっては早期に手術が必要な症例もあるため、早めに医師に相談することが重要です。
椎間板ヘルニアとは?
椎間板ヘルニアは、脊椎の間にある椎間板が変性し、外側の線維輪が破損したり、内部の髄核が突出することによって生じる病態です。神経が圧迫され、下肢のしびれや疼痛といった症状が出現することがあります。椎間板は背骨のクッションとしての役割を担い、日常生活での動作や衝撃を吸収しますが、年齢を重ねることや外傷、重い物を持ち上げるといった負荷により、椎間板が損傷することがあります。その結果、椎間板が正常な位置からずれ、神経を圧迫し、腰痛や足のしびれなどの症状が現れます。
症状の進行を防ぐためには、早期の診断と適切な治療が重要です。
椎間板ヘルニアの主な症状と原因
症状と診断方法
椎間板ヘルニアの症状は多岐にわたります。足のしびれや疼痛、筋力低下が主な症状ですが、若い方の場合は腰痛だけというケースもあります。症状の現れ方や進行の程度には個人差があり、また急激に進行するケースがあることに注意が必要です。診断には、まず問診や診察で所見を確認した後、MRIを撮影することで正確な診断が可能です。
適切な診断が早期に行われることで、治療法の選択肢が広がり、手術を含む多様なアプローチを検討することが可能になります。
発症する原因とリスク要因
椎間板ヘルニアは、加齢に伴い椎間板の水分が減少し、弾力性が低下する椎間板変性が主要な原因となります。何のきっかけもなく発症する方もいますが、外傷やスポーツ、重労働などによって急に発症・悪化する方もいます。遺伝的な要因も指摘されており、家族に椎間板ヘルニアの既往がある場合には特に注意が必要です。また、喫煙は血流を悪化させ、椎間板の栄養状態に悪影響を及ぼすことで発症リスクを高めます。肥満は腰部に過度の負担をかけるため、注意が必要です。運動不足は筋力の低下を招き、椎間板への負担を増加させるため、日常的に適度な運動を行うことが推奨されます。
これらの要因を理解し、生活習慣を見直すことが、椎間板ヘルニアの予防に繋がります。
椎間板ヘルニアの検査プロセス
椎間板ヘルニアの診断は、下記のような手順で行います。
まず、医師は患者様の症状を詳細に聞き取り、腰や下肢におけるしびれや疼痛の状態を確認します。さらに、身体検査によって筋力低下や神経への影響を評価します。次に、レントゲンやMRIといった画像所見をとることで、椎間板の位置や神経の圧迫状態を視覚化し、神経の圧迫部位が症状と矛盾がないことを確認することで診断に至ります。神経の圧迫部位と症状が一致しない場合には、さらに神経根ブロックを行うことで診断の補助とする場合があります。
これらの検査プロセスにより、患者様に最適な治療計画を立てることができ、迅速に適切な治療を受けることが可能となります。当院では、診察から画像診断まで受診当日に行える体制を整えており、椎間板ヘルニアを効果的に治療できるようにしております。
治療法の選択肢
非手術療法の紹介
椎間板ヘルニアの治療の基本は、手術を行わない保存療法です。これは、自分の免疫力によってヘルニアが吸収される可能性があるためで、その補助として薬物療法や理学療法を行います。薬物療法としては、痛みや炎症を緩和するために非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)やCaチャネル阻害薬(プレガバリンなど)が使用されます。リハビリテーションでは、専門の理学療法士が個々の患者様に応じた運動プログラムを提供し、筋力を強化しつつ柔軟性を向上させます。
椎間板ヘルニアによる症状が出る原因の1つとして、日常生活や仕事における姿勢の悪さや筋力の低下があります。当院ではピラティスを用いることで首や肩を含む背骨を支える筋力を強化し、筋肉の柔軟性を効率的に高めることにより、痛みの緩和のみならず再発予防につながるプログラムを提供しております。
保存療法と手術療法の中間的な治療として、椎間板内酵素注入療法(化学的髄核融解術)があります。これは、椎間板に注射することで、脱出しているヘルニアが神経の圧迫を解除されることを期待する治療法です。症状の改善まで少なくとも3週間程度かかりますし、ヘルニアが椎間板から分離しているタイプには効果がないなど制限もありますが、日帰りでできる点が大きなメリットです。一方で、将来的に椎間板の変性が進んでしまう可能性があることと、2回目以降の注入でアナフィラキシーショックをきたす可能性があり、人生で1回しかできない治療であることに注意が必要です。
椎間板ヘルニアは、多くの場合、保存療法で改善が期待できます。しかし、症状や経過によっては、手術が必要となるケースもあります。特に、下肢の麻痺や排尿障害をきたした場合には緊急で手術が必要になる可能性もあります。また、保存加療でよくならない場合や、疼痛が強くて日常生活に支障をきたす場合には手術が必要になる可能性もあります。保存加療をしながら、手術が必要な状態にならないか医師による定期的な診察が重要です。
手術療法の紹介
椎間板ヘルニアで保存加療をしても改善しない場合や、疼痛が強くて日常生活に支障をきたしている場合、麻痺や排尿障害をきたした場合には手術療法が必要になります。一般的に行われるのは椎間板摘出術で、ヘルニアを摘出することで神経への圧迫を解消し、しびれや疼痛といった症状を改善することを目的としています。ただし、ヘルニアの脱出部位や形態、もともとの脊椎の変形の有無などによって、脊椎の安定性を高める金属性のインプラントを用いる椎体間固定術が必要になる場合があります。手術療法は、症状の改善を期待できる治療法の一つですが、患者様の状態によって適切な手術方法は異なります。医師と相談しながら治療計画を立てることが重要です。当院では、手術が必要な患者様に対して、調布くびと腰の整形外科クリニック(https://sekitsui.clinic/surgery/)の医師と連携し診療しております。是非、担当の先生とよくご相談下さい。